屋根リフォームを検討している方の間で近年特に人気を集めているのが、ニチハ株式会社が製造する「横暖ルーフ」シリーズです。
「軽くて丈夫」「断熱性が高い」「見た目がスマート」といった特徴から、金属屋根リフォームの定番として全国で採用が広がっています。
私は20年以上、戸建て住宅や公共建築物の屋根設計・監理を行ってきましたが、横暖ルーフはリフォーム適性・性能・信頼性のバランスが極めて高い屋根材の一つです。
この記事では、以下の点を中心に、初心者にもわかりやすく・かつ専門家視点で徹底解説します。
- 横暖ルーフの特徴と種類
- メリット・デメリット
- 耐久性とメンテナンス周期
- 工事価格・費用相場
- 施工時の注意点
- 他の屋根材(スレート・瓦・スーパーガルテクトなど)との比較
- 一級建築士が選ぶおすすめグレード
✅ この記事を読むと
- 横暖ルーフが自宅に向いているか判断できる
- リフォーム費用の妥当性を見極められる
- 業者選びで失敗しない知識が身に付く
第1章:横暖ルーフとは?概要と歴史
■ 横暖ルーフの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製造元 | ニチハ株式会社(子会社:チューオー) |
| 発売開始 | 2000年 |
| 種類 | 断熱材一体型 横葺き金属屋根 |
| 材質 | ガルバリウム鋼板またはエスジーエル鋼板 |
| 断熱材 | 硬質ウレタンフォーム(厚み12~17mm) |
| 張り方 | 横葺き(長尺3m) |
| 重量 | 約5kg/㎡(瓦の約1/10) |
横暖ルーフは、日本初の断熱材一体型横葺き金属屋根として誕生しました。 当時はまだ「カバー工法」という概念が浸透しておらず、既存屋根に重ねて施工できる軽量屋根材として画期的な存在でした。
その後、時代のニーズに合わせて性能改良が重ねられ、2025年現在では5つのシリーズがラインナップされています。
第2章:横暖ルーフの種類と特徴
横暖ルーフシリーズは、塗装の種類・鋼板の素材・断熱材の厚みで性能が分かれています。
| 商品名 | 断熱材厚 | 塗膜 | 鋼板種類 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 横暖ルーフ S | 12mm | ポリエステル | ガルバリウム | コスパ重視モデル |
| 横暖ルーフ αS | 17mm | ポリエステル | ガルバリウム | 人気No.1・高断熱仕様 |
| 横暖ルーフ プレミアムS | 12mm | フッ素 | エスジーエル | 耐久重視モデル |
| 横暖ルーフ αプレミアムS | 17mm | フッ素 | エスジーエル | 最上級モデル |
| 横暖ルーフ αSちぢみ/窯変 | 17mm | ポリエステル | ガルバリウム or エスジーエル | デザイン性重視 |
特に「横暖ルーフαプレミアムS」は、以下の3点が揃った最高グレードです。
- 厚さ17mmの断熱材
- フッ素塗膜
- 高耐食エスジーエル鋼板
断熱性・遮熱性・耐久性のすべてにおいて国内トップクラスの性能を誇ります。
第3章:横暖ルーフのメリット15選
一級建築士としての視点で、横暖ルーフの「選ばれる理由」を具体的に掘り下げます。
1. 25年以上の実績と信頼
2000年の発売以来、全国で数十万棟に施工されてきた実績。長期的な使用データが豊富で、耐久性や施工ノウハウが確立されています。
2. 圧倒的な軽量性で耐震性アップ
瓦屋根(約63kg/㎡)に比べてわずか5kg/㎡。屋根が軽くなることで建物の重心が下がり、地震時の揺れを軽減します。
🧱 比較:屋根材ごとの重量
- 瓦屋根:63kg/㎡
- スレート屋根:31kg/㎡
- 横暖ルーフ:5kg/㎡
古い住宅(2000年以前の設計)でも、横暖ルーフへのリフォームで耐震性能を大幅に向上させることができます。
3. 優れた防水構造
横暖ルーフは「4重防水構造+水抜き設計」を採用。雨水が侵入しても内部に滞留せず排出されるため、雨漏りリスクが非常に低い屋根材です。
4. 全国対応可能な気候適応性
飛び火試験にも合格しており、防火地域・積雪地域・沿岸地域など全国どこでも施工可能。極寒の北海道でも実績があります。
5. 長尺3mパネルで継ぎ目が少ない
継ぎ目(ジョイント部)が少ないことで、防水性・意匠性が高く、ソーラーパネルの設置にも最適。
6. デザイン性が高い
段差のある「αシリーズ」は立体感があり、モダンで高級感のある外観を演出します。色はブラック・ブラウン系が人気。
7. 優れた断熱性能
裏面に硬質ウレタンフォームを一体成形。夏の屋根裏温度を最大20℃低減する実測データもあります。
8. 遮熱鋼板による高い日射反射率
横暖ルーフαSのブラックカラーは日射反射率44%と非常に高く、他社製品(例:スーパーガルテクトの13~26%)を大きく上回ります。
9. 高い遮音性
断熱材層が雨音を吸収。金属屋根特有の「パタパタ音」を感じにくく、静かな室内環境を保ちます。
10. 高耐久のエスジーエル鋼板
プレミアムシリーズは「ガルバリウムの約3倍の耐食性」をもつエスジーエル鋼板を採用。塩害地域でも安心です。
11. 長期保証付き
穴あき保証:25年
赤サビ保証:20年
塗膜保証:15年
色あせ保証(フッ素塗膜):最大20年
これは国産金属屋根の中でも最長クラスの保証内容です。
12. 豊富な専用部材
約40種類の板金部材(軒先・棟・ケラバなど)をラインナップ。細部まで美しく納めることができ、雨仕舞の信頼性も高いです。
13. 品質管理が徹底
すべての部材が個別梱包されており、傷や変形を防止。国内生産ならではの安定品質です。
14. 毎年の改良で進化し続ける屋根
2024年にもジョイント部仕様が改良されるなど、継続的な改善が行われています。
15. 施工マニュアルの公開
ニチハは施工マニュアルを一般公開。透明性の高い姿勢は、メーカーとしての信頼の証です。
第4章:横暖ルーフのデメリットと注意点
どんなに優れた屋根でも、弱点はあります。専門家として正直にお伝えします。
1. 施工難易度が高い
横暖ルーフは板金職人の技術が必要な屋根材です。経験の浅い業者では雨漏りの原因になるリスクもあります。
→ 必ず「横暖ルーフの施工実績がある板金工事会社」に依頼しましょう。
2. 表面が傷つきやすい
フラットな塗装面は施工時に細かい傷が付きやすいため、取り扱いに注意が必要。施工時は養生や手袋着用が必須です。
3. 緩勾配屋根には不向き
勾配が2.5寸未満の屋根には原則使用不可。この場合は「縦葺き金属屋根(立平葺きなど)」を選ぶのが安全です。
第5章:横暖ルーフの耐久性とメンテナンス
■ 耐用年数の目安
| 鋼板種類 | 耐用年数(目安) |
|---|---|
| ガルバリウム鋼板 | 約30年 |
| エスジーエル鋼板 | 約35年~40年 |
正しい施工と定期メンテナンスを行えば、30年以上の長寿命屋根になります。
■ メンテナンス周期(推奨)
| 項目 | 時期 | 内容 |
|---|---|---|
| シーリング交換 | 10年ごと | 目地や板金継ぎ目を補修 |
| 塗装メンテナンス | 15~25年 | ポリエステル系は早めに |
| 棟板金・面戸補修 | 20年 | 強風対策・防水補強 |
| 葺き替え検討 | 30年以降 | 経年劣化により判断 |
第6章:横暖ルーフの価格と費用相場【2025年版】
■ 屋根材価格(メーカー希望小売価格)
| 商品名 | 材料価格(税抜)/㎡ |
|---|---|
| 横暖ルーフ S・αS | 約7,700円 |
| 横暖ルーフ プレミアムS・αプレミアムS | 約9,400円 |
| 横暖ルーフ αS窯変 | 約9,600円 |
■ 工事価格(施工費込みの目安)
| 商品名 | 工事単価(税抜)/㎡ | 特徴 |
|---|---|---|
| 横暖ルーフ αS | 5,800円 | 人気・高断熱 |
| 横暖ルーフ αプレミアムS | 6,800円 | 耐久・遮熱性最強 |
| 横暖ルーフ αSちぢみ(茶) | 5,800円 | デザイン重視 |
🧮 一般的な戸建て(30坪・屋根面積80㎡)の費用目安
横暖ルーフαS: 約46~55万円(材料+施工)
αプレミアムS: 約55~65万円
※既存スレート屋根のカバー工法時
第7章:横暖ルーフの工法と施工時の注意点
■ カバー工法(重ね葺き)
既存スレート屋根の上に防水シート(ルーフィング)を張り、その上から横暖ルーフを施工する工法。解体不要のため工期が短く・費用を抑えられるのが特徴です。
🔧 カバー工法の流れ
- 点検・現地調査
- ルーフィング施工
- 横暖ルーフ本体張り
- 棟板金・ケラバ施工
- 清掃・完了検査
第8章:他の屋根材との比較
| 項目 | 横暖ルーフ | スーパーガルテクト | スレート | 瓦 |
|---|---|---|---|---|
| 重量 | ◎ 超軽量 | ◎ | △ | × |
| 断熱性 | ◎ 一体型ウレタン | 〇 | △ | 〇 |
| 防水性 | ◎ 4重構造 | 〇 | △ | ◎ |
| 耐久性 | ◎ 30~40年 | 〇 25~35年 | △ 15~20年 | ◎ 50年~ |
| メンテナンス | 〇 中程度 | 〇 | × 頻繁 | ◎ 低頻度 |
| デザイン | ◎ モダン | 〇 | △ | 〇 伝統的 |
| コスト | 〇 | ◎ | ◎ | × 高額 |
→ 総合的にみて、リフォーム適性では横暖ルーフが最もバランスが取れているといえます。
第9章:おすすめグレードと選び方
✅ 迷ったらこれ!
横暖ルーフαプレミアムS
理由:
- エスジーエル鋼板+フッ素塗膜で最高耐久
- 17mm断熱材で遮熱・断熱性トップ
- 塩害地域・豪雪地域にも対応
- メンテナンス周期が最も長い
コストを抑えたい場合は「αS」も優秀です。
第10章:実際の施工事例と口コミ
■ 事例:東京都板橋区
- 既存屋根:スレート(パミール)
- 新屋根:横暖ルーフαプレミアムS
- 工法:カバー工法
- 工期:約5日
- 総費用:約73万円(税抜)
お客様の声
「夏の2階が驚くほど涼しくなり、エアコンの効きも改善しました。雨音も静かで、仕上がりにも満足しています。」
第11章:業者選びのポイント
- 横暖ルーフの施工実績が10件以上あるか
- 板金職人が自社在籍しているか
- 下請け任せでないか
- 施工保証(10年以上)があるか
- メーカー指定ビス・部材を使用しているか
これらを確認することで、施工不良や雨漏りトラブルを未然に防げます。
第12章:まとめ|横暖ルーフはリフォーム時代の最適解
横暖ルーフは、軽くて丈夫、高断熱・高遮熱、防水性・耐久性に優れるという三拍子が揃った次世代型金属屋根です。
特に「αプレミアムS」は、長期的な住まいの快適性と省エネ効果を両立できる理想的な屋根材といえます。
🔍 最後に:こんな方におすすめ
- スレート屋根の劣化でリフォームを検討中
- 夏の暑さ・雨音を改善したい
- 長くメンテナンス不要な屋根にしたい
- 地震に強い軽量屋根に変えたい
横暖ルーフは「美観・性能・実績・施工性」のすべてが高水準。適切な業者による正しい施工が行われれば、30年以上快適に暮らせる屋根材です。



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